RESEACH研究内容

概要

血液がんの一つである骨髄異形成症候群(MDS)は第二の白血病と呼ばれている難治性の血液疾患です。60歳以上の血液がんの中で最も高頻度で、高齢化社会のわが国においてその発症の増加が問題となっています。ゲノム解析の結果から、若年者にもみられる急性白血病とは異なっており、むしろ固形がんと同様な発症機序であることが分かってきました。我々は、世界に先駆けて骨髄異形成症候群(MDS)の責任遺伝子として「RUNX1遺伝子変異」を同定しました。倫理審査委員会の承認が得られている血液専門病院との共同研究により、骨髄異形成症候群(MDS)の臨床検体を用いてゲノム異常・遺伝子発現を網羅的に解析し、得られた結果をヒト造血幹細胞・マウス造血幹細胞やモデルマウスを使って検証するという手法により、骨髄異形成症候群(MDS)の発症機序解明を目指した研究を行っています。

骨髄系腫瘍患者で認められるRUNX1変異

1. RUNX1変異による骨髄異形成症候群の発症機序解明

臨床検体の解析により、RUNX1変異が骨髄異形成症候群(MDS)やMDSから移行した急性骨髄性白血病(AML)で高頻度に認められることを見出しました(Blood 2003,Blood 2004,J Rad Res 2008,Blood 2009,Blood 2010)。このRUNX1変異と協調してMDS/AML発症に関与する遺伝子変異として、RTK~RASシグナル伝達系やDNA修復経路の異常が高頻度であることを明らかにしました(Leukemia 2006,Leukemia 2012)。RUNX1変異体導入マウスはMDS/AML様の造血異常を来たし、Evi1高発現と協調して白血病を発症しました(Blood 2008)。

RUNX1の構造と変異部位

またヒト造血幹細胞にRUNX1変異体を導入すると患者病態に類似した細胞増殖を再現でき(J Cell Physiol 2009)、RUNX1変異患者ではBMI1が高発現で、増殖能を欠く変異体もBMI1と共発現させることで腫瘍性増殖能を獲得することを示しました(Blood 2013)。さらに、RUNX1変異に高率に合併する7q-の責任候補遺伝子EZH2遺伝子変異とRUNX1変異体との協調作用も明らかにしました(Nat Commun 2014)。このように、RUNX1変異と協調する遺伝子異常を臨床検体から同定し、モデルマウスを作製して分子メカニズムの解明を行っています。

RUNX1変異によるMDS発症機序

2.家族性骨髄異形成症候群家系の発症プロセスの解明

遺伝性疾患である「RUNX1変異による家族性骨髄異形成症候群(MDS)」家系の発症までの過程を解析し、MDS発症にかかわる付加的遺伝子異常を明らかにしました(Nat Commun 2014)。その家系の非MDS発症患者の末梢血リンパ球を用いてiPS細胞を樹立して造血機能破綻機構を解明しました(Leukemia 2014)。さらに、RUNX1変異以外の遺伝子異常を有する家族性MDS家系についても、臨床検体を用いて網羅的解析を行い、iPS細胞を樹立して検討を行っています。

3.骨髄造血器腫瘍における骨髄微小環境の解明

骨髄造血腫瘍の発症・進展に骨髄微小環境の関与が注目されています。その一つである骨髄線維化の発症機序を明らかにし(Blood 2015,JEM 2016)、さらにモデルマウスの作製を行って線維化抑制の標的を探索しています。